NHKのEテレで放送されている「人間ってナンだ?超AI入門シーズン2」。
AI技術の紹介、また実際の活用事例なども取り上げられていて、超AI入門というように非常にわかりやすく面白い番組です。
現代は「IT×●●」というように、あらゆるものにITが入っている時代。
そして、人工知能(Artificial Intelligence)の進化・発展に伴い、近未来は様々な分野で「AI×●●」となっていくでしょう。
日進月歩で開発が進むAIの進化の先に、どんな未来が待っているでしょうか?
さて、シーズン2の第10回のテーマは「老いる」です。
人間は老いていくことが避けられない
『未だ生を知らず 焉(いずく)んぞ死を知らん』という「論語」にある孔子の言葉。
生というものがわからいのに、死というのはわからないだろう。という意味だそうです。
冒頭からこういった内容に、ワクワクしてしまいました。笑
そもそも、死とはなんなのか?
私たちが意識を持って世の中を認識しているというのは、本当に不思議であり神秘的なことなんだなと改めて感じますね。
死=意識がないこと?
では、眠っている時も意識が無い状態はどう捉えることができるのか。
意識に主体性はない。
「自分の体を自分で動かしている」というのは一種の錯覚であって、
意識そのものがどうやって生まれるのかがわからないのが人間だという現在地を素直に受け入れる必要があるなと思いました。
人工知能は脳の働きの一部を行う
松尾教授も、ディープラーニングによって大脳皮質の一部の機能を実現できるようになってきた、とおっしゃっていました。
(大脳皮質・・大脳の表面に広がる神経細胞の層。思考などをつかさどる。)
人工知能研究が裏を返せば人間研究であるということにも繋がってくるんだなと改めて実感しますね。
また、人間が他の哺乳類との違いは”言葉”が使えることと紹介されていましたが、
”知能の本質”を知りたい人間のあくなき挑戦が垣間見えたような気がします。
人間をコーチングするAI
さて、日本は特に超高齢化社会です。
介護の現場にもAIを活用した事例がいくつか紹介されていました。
介護者との距離や目線の合わせ方など、ディープラーニングによって学習し、
見る、触る、などの動き方、やり方をAIによってフィードバックするそうです。
AIが人間をコーチングするという表現がされていましたが、これは介護分野だけではなく様々な分野に応用されていくものだと思います。
また、エビデンスベースドケアというのが紹介されていたのでメモしておきます。
エビデンスベースドケアとは、
見る、話す、触れるなどベテラン介護者の多様な動きをAIが学習し可視化することで、誰もが達人のような振る舞いができるようになること
他には、
・日常生活のちょっとした変化を察知する発話が不自由な人の脳に何がおきているのか、音声から認知症判断を行うシステム
・一緒に体操して癒すロボット
・着衣介助ロボット
など、老いの現場に入るAIとして紹介されていました。
「人間+AI」はどこまで「人間」なのか!?
人間の身体は老いによって筋力など機能が衰えていくものです。
そこで、AIやロボットを駆使して人間の機能を”置き換える”未来が近い将来やってきます。
様々な選択肢が増え、自分の体をカスタマイズできるかもしれません。
意識は人間、動かす体は機械。
攻殻機動隊のような世界観ですが、「人間+AI」はどこまで「人間」と言えるのでしょうか。
人間とはなんなのか?
自分とはなんなのか?
という本質的な問いが出てくるので、深い問題意識が必要だなと感じました。
蒸留(distilation)という概念も紹介されいたので、こちらもメモしておきます。
TeacherネットワークがStudentネットワークに学習結果を教えることによって、Studentネットワークは効率的に学習できる。
そのため、Studentネットワークは学習できる余地があるため、もっと先まで進める。
ニューラルネットワークで学習する過程を抽象化されていく。
無駄な思考を省き、効率的に学ぶ術を手に入れようとするのが人間です。
老いて次の世代にバトンタッチしていくように、AIも経験と判断力を蓄積、知的な進化を遂げていくのでしょうか。
人間とAIの理想の関係とは?
番組内では、”互いに補完し合っている関係が一番健康的”とありました。
それは確かにそうだなと思う一方で
・人を変える
・機械を作る
2つの側面から様々なことを考えていかなければならない問題だなとも感じました。
脳の仕組みがわかってきて、脳へ擬似的に報酬物質を出せるようにもなってくるようになった時、
人にとっての幸せって一体なんなのか?
そんなことも考えなければなりません。
また、松尾教授が番組後半で言っていた知能に対する考え方が面白いなと思ったので紹介します。
AIをあり得べき知能の形と捉えた時、
AIの領域の中に人間型知能と考えることもできる。
それ(人間型知能)はごく一部なので偏っている。
今までは、人間とAIが対立的に捉えていたけれども
人間もAIの一つ、人間型知能なんだという言い方もできるんじゃないか。
知能のあらゆる形の総体をAIと呼ぶなら、人間型知能はその一部とも言えます。
AIや知能をどう捉えるかで、同時に私たち人間をどう捉えるかも変わってくるなと思いますね。
感想
今回は、「老いる」というテーマでした。
今までのテーマの中で、人間とはなんなのかという一番本質的な内容に繋がるなという印象です。
テクノロジーを駆使すれば、老いを和らげ寿命を長くしていくことができるのは間違いありません。
人生100年時代では、人間の在り方は大きく変わっていくのだと思います。
そして、人間至上主義の社会に楔を打つのがAIになっていくのかなとも感じました。
AIによって人間が楽をする分野が増えていく一方で、人間が本当に進むべき道やあるべき道というものの開拓をしていかなければなりません。
人間が動物の中でも唯一違うことはなんなのか?
やっぱり論理的に悟ること。
AIもない、知能もない、人間もない、存在もない
あるのは、それらを生み出す根源的かつ源泉的な何かがあるだけ。
生死も超えた観点の外に出ることが唯一行くべき方向性なのかなと改めて感じました。
オススメ図書
番組にも出演されている東京大学の松尾教授の講演をお聞きした際に、人工知能関連の推薦図書が紹介されていました。
私もこれらの図書を通して、一般的な知識は身についたと思っていますので、興味のある方はぜひお手にとってみてください。
・入門書として
・読み物として