最近、人工知能(Artificial Intelligence:AI)という言葉を聞かない日がないくらい、一般的な用語になってきたなと感じます。
人工知能というものは、何も最近始まったことではなく実は数十年も前から研究されていたものですが、なぜ今になってこれだけ注目されるようになったのでしょうか。
その中核技術となっている「ディープラーニング(DeepLearning、深層学習)」とは一体どういう技術なのかまで理解できると、この技術革新がいかにすごくて私たちの生活を劇的に変えて行くのかという可能性を感じられるのではないでしょうか。
ディープラーニングについて、まとめてみましたので、ぜひ興味のある方はご参考にされてみてください。
(本記事に掲載している内容は、科学誌Newton(ニュートン)の2018年01月号「AI大特集 ゼロからわかる人工知能」の内容を引用しています。)
Contents
人工知能(Artificial Intelligence)の歴史
人工知能(Artificial Intelligence)という言葉自体は、1956年に生まれた言葉のようですね。
そして、二度のAIブームと冬の時代を超えて、今は「機械学習」と「ディープラーニング」による第三次AIブームと表現されています。
人工知能のレベル
一般的に世の中の商品やサービスに登場する「AIなんちゃら」というものは、一言でAIと表現されていますが、そのレベルは全く違います。
特にレベル4までなると、画像認識の精度がどんどん向上し自動運転に応用されたり、私たちの生活レベルが大きく変わっていくと言われていますね。
世の中の「AIなんちゃら」がどのレベルのものを言っているのか、見極めるモノサシになりますね。
ディープラーニング(深層学習)とは?
「ディープラーニング」を取り入れることで、人間が無意識的に判断している”特徴”をコンピューターも自ら見いだすことができるようになるわけですが、どうやってその特徴を抽出するのでしょうか。
ディープラーニングとは、コンピューター上で神経回路を模して作られたシステムである「ニューラルネットワーク」を何層にも重ねる(深くする)ことで作られたシステムのことを指します。
ニューロン(神経細胞)はシナプスという構造を通じて、他のニューロンからの入力信号を受け取ります。
簡単に言えば、人間の脳内で起きるこの情報処理方式をそのままコンピューター上に実装したもですね。
人工知能の学習とは?
人工知能が果たしてどんなステップで学習をしていくのか、順に見てみましょう。
例えば、コンピューターがイチゴとリンゴという概念が無い状態から、どうやって概念(特徴)をつくり、正解を導いて行くのでしょうか。
STEP1.画像入力
イチゴの画像を入力。このイチゴの画像には、人間によって「イチゴ」と正解のラベルが貼られている。
STEP2.分類
初期段階では、リンゴとイチゴを分類する特徴が抽出できておらず、適切な重みづけも不明。
まずは全てを足し合わせて、平均をとる。
STEP3.結果の出力
リンゴである確率とイチゴである確率を比較し、結果を出力。今回の場合、イチゴかリンゴか判別できていない。
STEP4.答え合わせ
画像に貼られているラベル(正解)と出力結果を付き合わせる。答え合わせの誤差が小さくなるように、人工知能は自ら線の結び方(重みづけ)を変えて行く。
その結果、抽出される特徴も変わって行く。これが「機械学習」。
ディープラーニングの場合、出力層から入力層に向けて多くの隠れ層をさかのぼって、全ての重みづけを変更して行く。
STEP5.多くの画像を入力
人工知能に機械学習を行わせるため、リンゴとイチゴの画像を数多く入力。この時も、リンゴの画像には人間によって「リンゴ」、イチゴの画像には「イチゴ」と正解ラベルを貼る。
STEP6.学習によって適切な特徴と重みづけを得る
数多くの画像について一つずつ、分類しては答え合わせを行うことで、誤差を小さくしていく。
今回の場合、当初の誤差の合計は100だったのに対し、機械学習を繰り返すことで、30まで小さくなっている。このような計算によって人工知能は適切にリンゴとイチゴを分類できるようになっていく。
このようなステップを踏んで、イチゴという概念を作り上げて行くのが人工知能の学習方式になります。
人工知能の性能が向上した要因とは?
ディープラーニングが、実用に耐えるほどの精度が出ない問題をクリアしてきた要因として、以下の3つが挙げられます。
- 本格的な機械学習を行う前に、“プレトレーニング”などによって効率よく学習するようにする
- インターネットの拡大によって使用できる画像データが爆発的に増えた
- 処理するハードウェアの進化
ハードウェアの進化とソフトウェアの進化、そして環境も合わさってのことだなと感じますね。
ディープラーニングの弱点とは?
さて、ここまで人工知能の学習方式について見てきましたが、最後にディープラーニングの弱点についても触れておきたいと思います。
(弱点)
- 正解付きのデータが必要
- 「なぜそう判断したのか」が基本的に人間はわからない
ビッグデータを駆使して特徴を抽出するので、学習にはどうしても正解付きデータが大量に必要になってくるという弱点が1つ。
そしてももう1つは、人間はあくまで出力された結果のみを見るため、なぜそう判断されたかのプロセスや原因はわからないのが1つ。
今後、医療の分野などあらゆる分野にこの人工知能が登場し、人間のアシスタントとして活用される時代は近未来に訪れるのは間違いありません。
しかし、人工知能が導き出した結果を最終的に人間がどう判断するのかといった議論は、今後も続いて行くのだと思います。
結局は、人工知能も道具。
使う側の人間がどう使うのか、その一点に尽きると思います。
ディープラーニングについてもっと学んでみたい
日本ディープラーニング教会が実施するG検定やE検定へのチャレンジを通して、ディープラーニングの技術を深めてみてもいいかもしれません。
日本ディープラーニング教会 設立目的本協会は、ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指します。
そのため、ディープラーニングを事業の核とする企業および有識者が中心となって、産業活用促進、人材育成、公的機関や産業への提言、国際連携、社会との対話 など、産業の健全な発展のために必要な活動を行っていきます。
日本ディープラーニング教会のホームページより引用:https://www.jdla.org/about/
余談
コンピューターはディープラーニングによる新たな学習方式の獲得によって大きく進歩していますし、これからもどんどん進化発展していくのは間違いありません。
一方、人間の学習方式というのは、人類500万年間大きく進歩しているとは言えません。
ずっと過去の経験や知識に捕まっているし、人間の5感覚という条件づけられた認識にも限界があります。
人間の認識のアップデートなくして、超AI時代の人間とAIの共存・共創・共栄はないのではないかなと思います。
人間の認識のアップデートに対する問題意識については、別の記事「AI時代は人間の脳の認識OSをアップデートせよ!!」にまとめているのでぜひ合わせてご覧ください。
人工知能について学ぶ上でのオススメ図書
人工知能研究の第一人者である、東京大学の松尾教授もオススメしていた図書をご紹介します。
講演会をお聞きした際に、入門書としての図書、読み物としての図書とそれぞれ紹介されていたので、深めたい人はぜひ手にとってご覧ください。
・入門書として
・読み物として