今世紀中に人間が全知全能の神に進化すると予言しているYuval Noah Harari(ユヴァル・ノア・ハラリ)氏の著書『ホモ・デウス』をご存知でしょうか?
250万年の人類のこれまでの歩みを独自の目線で記し、人間の幸福とは何か問いかけた『サピエンス全史』の続編で、人類の未来について考えた本です。
先日、NHKのBS1スペシャルで「"衝撃の書"が語る人類の未来〜ホモ・デウス〜」が放送されていましたので、要点をまとめておきます。(番組の中の言葉をかなり拾った形になっています。)
私は、この『ホモ・デウス』については、人間がこれからのAI時代を生き抜いていく上で、非常に重要な内容だと思っています。
ぜひ深く考えていきたいです。
人間が神性化したホモ・デウスへのアップグレード
『ホモ・デウス』の本では、人類の進化に触れながらテクノロジーの進歩が人間の手に追えないものになると警鐘を鳴らしています。
その中で、鍵となる代表的なテクノロジーとして、
・遺伝情報を書き換え、ゲノム編集された人間が誕生するような生物工学
・脳に埋め込まれたチップによって物体を動かすような人体拡張
・人間の知能を凌駕するAI(人工知能)
が挙げられいました。
テクノロジーによる人間の進化はこれからどいうなっていくのでしょうか。
テクノロジーによって、今まで不可能だと思っていたことがどんどん可能になってきます。
時代を新たな時代に押し上げていくのはテクノロジー。
そのテクノロジーの進化が本当に凄まじい・・・
「何もしなければ、人類が超エリート人間の小集団と
経済的・政治的力を全く持たない巨大な底辺層の役に立たない人間とに分裂する危険がある
彼らは、新しい”無用者階級”となるのです」
と番組内で衝撃の内容が出てきました。
格差社会から超格差社会へシフトしていくのでしょうか。
先ほど挙げたテクノロジーによる革命は、人類史上最大の革命であるだけでなく
40億年前に生命が誕生して以来の大変革になると伝えるハラリ氏。
歴史を学ぶ意味についても触れられていました。
歴史を学ぶ意味とは
自分たちが過去にとらわれないようにするため
「昔の人と同じようにやろう」というのはあまり意味がありません
なぜなら世界はとてつもない勢いで変化しているので100年前のやり方は通用するはずがない
私たちの未来を正しく考えるために過去について人々が語ってきたことが本当なのかフィクションなのか見極めることが大事
人間至上主義とは何なのか?
神の力を得ようとする人間の背景には、人間だけが幸福を追求し欲望を満たす価値があるという考えの”人間至上主義”があります。
私たちは幼い頃から、人間至上主義のスローガンをこれでもかとばかりに浴びせかけられる。
そうしたスローガンは、
「自分に耳を傾けよ、
自分に忠実であれ、
自分を信頼せよ、
自分の心に従え、
心地よいことをせよ」と勧める。
知能を発達させ、道具を使い、歴史を経てここまでのポジションを構築してきた人間ですが、
人間至上主義にたつ人間が、テクノロジーを手にしてホモデウスを目指すという道はこれまでにないほど過酷になると言われています。
21世紀には、進歩の列車に乗る人は神のような創造と破壊の力を獲得する一方、
後に取り残される人は絶滅の憂き目に遭いそうだ。
とハリル氏。
テクノロジーを駆使してアップグレードした存在であるホモ・デウスになれるのは一部のエリートだけで、
残りの多くは取り残され、社会的に価値がない無用者階級になっていく可能性は本当に大きな問題を抱え、社会的な課題になっていく気がします。
格差は一度広がると元に戻すことは困難です。
警鐘を鳴らすテクノロジー
生物工学
ハリル氏が警鐘を鳴らす3つのテクノロジーの1つ目に挙げたのが、生物の設計図である遺伝情報を書き換える生物工学です。
生物工学によって遺伝子コードを書き換えることによって体を変化させる。
ゲノム編集の技術が進化することで、人間も含め多くの生物の遺伝情報を書き換えることができるようになってくる。
体を変化させたり、また大量に生き物を生産できるようになっていくのかもしれません。
どうやって体や脳を作るかがわかれば事実上私たちは神
まさに神になる道を歩んでいる
可能性は広がる一方で、ゲノム編集を巡る競争の激化だったり、倫理的な問題など考慮するべき課題が本当に多い分野だと思います。
どんな方向に人類が進んでいくのは本当に予測できない・・・
人体拡張
機械と融合し能力を拡張する人体拡張が2つ目の技術です。
人間の力の増大は主に、外界の道具のアップグレードに頼ってきた。
だが、将来は人の心と体のアップグレード、あるいは、道具との直接の一体化にもっと依存するようになるかもしれない。
体の中にマイクロICチップを埋め込むことはすでに海外では実用化されていますし、
カードや現金での支払いから手のひらをかざすことで何でもできるようになってくるわけですね。
脳と機械の融合はブレイン・マシン・インタフェースの技術と呼ばれていますが。
脳に機械を操作するやり方を学べば、体に接続している必要がありません。
目が見えない人がいたらデジタルカメラを脳に繋いで目にできる
耳が聞こえない人がいたらマイクを脳に繋いで耳にできる
技術としての可能性は広がる一方で、もっと根本的な問題や課題が隠れているような気がします。
「創造と破壊を行なう神のような力を獲得し、ホモ・サピエンスをホモ・デウスへとアップグレードするものになるだろう。」
テクノロジーを追い求める人類は、この先どこに向かうのでしょうか・・・
人工知能
社会の変化を加速させると期待される技術にAIがあります。
第4次産業革命(Industry4.0)の渦中にいる私たち
インターネット上で流れる情報は膨大で年々増加し、それらの膨大なビッグデータを駆使する取り組みが盛んになってきます。
ありとあらゆる業界にAIが浸透していくことが期待され、仕事の質も効率も上げ、生活が革命的に変化することが期待されています。
まさに、第4次産業革命(Industry4.0)の渦中にいる私たち。
石器時代の人と今出会っても
現代人と同じ体で同じ精神をもっているはず
これから起きる革命は違う
AIは私たちの社会を変えるだけでなく体も精神も私たちを根本的に変えてしまう可能性がある
もやは同じ人類とは言えなくなる
AIという技術は、それほどまでにすさまじい変革の可能性を含んでいると想像することができますね。
人間とAI、知能と意識、の違い
番組内で、人間とAI。知能と意識について分類されていたのが非常にわかりやすかったです。
問題を解決する能力である知能と
物事を感じ取る能力である意識(喜怒哀楽、苦痛、愛、憎しみなど主観的なもの)
人間は感情を通じて問題解決をするけれど
AIは意識はなく知能だけを持つ
優れた知能をもつAIに助けられるうちに
知能の価値を意識より重んじるようになっていく
AI開発が進む上での最悪のシナリオ
世界中で知能の開発であるAIに巨額の投資が行われています。
では、AI開発のずっと先に、意識や感情を全く持たない超知的な存在ができたとして、そのAIに世界が支配されるということが最悪のシナリオと紹介されていました。
ほぼ全てにおいて私たちよりはるかに知的な存在
感情や主観もなく人間とは全く違った存在
人間の行動にAIが深く関わるようになったときに、私たちはどうなっていくのか?
人間の助けになっていたAIがいずれ人間を飲み込んでいく?
「やがて、わたしたちはこの全知のネットワークからたとえ一瞬でも切り離されてはいられなくなる日がくるかもしれない。」
「私のことを私以上に知っていて、私よりも犯すミスの数が少ないアルゴリズムがあれば十分だ」
「そういうアルゴリズムがあれば、それを信頼して、自分の決定や人生の選択のしだいに多くを委ねるのも理に適っている。」
データ中心主義になり、人間の意思決定より優れたAIに判断を委ねるならば、
人間そのものの価値が失われていくこととも懸念の一つと思うのですが、A Iの進化の先にどんな未来が待っているのでしょう。
人類はこれからどうしたら良い?
人類の未来のために、私たちはどうしていったら良いのでしょうか?
今の時代に生まれてきた子供達、次の時代を生きる子供達は、
成長した時どんな世界になるのかわからない時代を生きることになっていきます。
将来働く環境や人々の絆が、どんなものになるのか想像もつかない。
それくらい時代の変化が加速度的に変化しているのは、誰の目から見ても明らかです。
「最も大事なのは自分自身を知ること
自分が何者であるのかを理解すること
テクノロジーだけを追い求めるのではなく現状に満足する方法を学び
自分の内なる考えを深く理解することに時間を使うべきなのです。
あなたの心はどんな声を発していますか?
あなた以外にあなたを理解できる人は誰もいません
他の誰もあなたの頭の中をのぞいてみることはできないのです」
テクノロジーの光と影。
それらをしっかり議論する一方で、リベラルアーツや人間力を鍛えていく必要があります。
私は番組を通して、
・我々は何者か?
・我々はどこから来たのか?
・我々はどこに行くのか?
これらの問いにしっかり向き合い、人間に対する再規定が本当に必要だなと強く感じました。